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シアン無害化処理フローシートの説明

1.固液分離工程(前処理)

 各めっき工場からバキュームローリー車で集荷されたシアン濃厚廃液は、沈降槽に受入れ、砂、ごみ等を沈降分離除去し「固液分離」を行った後、上澄液は上澄槽に貯留される。シアン系炭酸ソーダ結晶物、およびシアン廃薬品は炭酸ソーダ溶解槽に投入し温水で溶解後、沈降槽に送り混合される。固液分離された砂・ごみ・バフかす等のスラリーは、フィルタープレスでケーキとし、「シアン含有汚泥」として産業廃棄物処理業者に処理委託する。

2.シアン分解処理工程(一次処理)

反応式  NaCN+2H2O→NH3+HCOONa

 上澄槽に貯留された上澄液を精密ストレナーで再ろ過し、原液槽に12㌔㍑ほどを入れ計量し、オートクレーブフラッシュ時の生蒸気の吹き込みにより直接加熱する。また、ボイラからの蒸気により間接予熱できる。この予熱はオートクレーブ内で生蒸気吹き込み昇温時の騒音発生が短時間ですむように80℃まで行われる。原液槽で予熱された液をオートクレーブ(加圧反応缶)に送り、生蒸気を吹き込み、分解反応温度である195℃まで昇温させると飽和水蒸気であるゲージ圧力14kg/c㎡に達しシアンは熱加水分解反応を起こし、アンモニアと蟻酸を生成する。翌朝まで約16時間保持しておくとシアン分解が完了する。シアンの熱加水分解が始まるとオートクレーブ内のアンモニアガス分圧が上昇し、アンモニアガスは圧力調整弁から吸収槽を経て自動的に放出される。廃液中の青化金属はシアンと金属の結合が解かれ金属酸化物となって、オートクレーブ下部に沈殿する。完全に金属類を沈澱させ残留金属を最少にするためには、オートクレーブ内に金属捕捉剤として硫化ソーダを添加する。

 翌朝、シアンの分解終了を分析により確認し、最初にゲージ圧力が10kg/c㎡近くあるオートクレーブの圧力逃がし弁を開く。オートクレーブから発生する180℃近い生蒸気は原液槽に吹き込み原液予熱に用いて熱の再利用に役立てる。次にオートクレーブの水蒸気及び上澄液をクッションタンクにフラッシングすると100℃の水蒸気と熱水およびアンモニアガスを放散する。水蒸気は熱交換器№1で冷却復水させ、クツションタンク内の液は下部からばっ気し液中のアンモニアをガス化して追い出す。その後徐々に熱水をアンモニアストリッピング塔へ移液し、更にばっ気する。

 オートクレーブ、クッションタンク、アンモニアストリッピング塔から発生したアンモニアガスは№1、№2スクラバーへ吸引され、それぞれアルカリ洗浄と酸洗浄が行われ不純物が除去される。

 オートクレーブ下部に沈殿した金属酸化物、硫化物はバッチ処理毎に洗浄、排出して中継槽に送り、沈殿物を№1遠心脱水機で分離し、ろ液はアンモニアストリッピング塔に戻す。

 遠心脱水された汚泥は、有価金属がかなり含まれているので山元に金属原材料として売却する。

 アンモニアストリッピング塔の液をpH調整金属除去槽に送りpH調整し、沈殿物は№2遠心脱水機で無害汚泥として除去する。脱水後の液は中和槽で過剰の硫化ソーダをORP制御で過酸化水素水を添加し処理する。

 また、№1、№2真空ろ過機で再ろ過し、これら「無害汚泥」は東京都処分場に搬入処分する。

 №2スクラバーの循環水は貯留槽№2へ排出される。№1スクラバーの循環水は原液槽に戻して再処理される。めっきシアン濃厚廃液は、これら一連の処理によりシアンは完全に無害化され金属類は除去されて有機性汚濁廃液になる。

3.生物処理工程(二次処理)

反応式  HCOONa→CO2+H2O

有機性汚濁廃液の水質はかなりよいが、よりよい水質にして排水を下水道に放流するため、生物処理施設でBOD値を下げる。さらに脱窒素のほか脱りん処理も合わせて行う。有機汚濁廃液は嫌気槽、活性汚泥槽№1,2,3,浸漬ろ床、アンスラサイトろ過機を経て処理されるが、活性汚泥槽№2を用い嫌気式脱窒素処理を行う。これは好気、嫌気、好気で構成される連続式処理法である。これら一連の処理が終わった排水は、pH調整放流水槽へ排出され分析確認後下水道に放流される。


スラッジ(汚泥)の処理方法

シアン濃厚廃液を沈降槽に受け入れ、沈殿ろ過した砂・ごみ及び貯留槽の廃液を再ろ過した汚泥は、シアンを含有しているので、少量ではあるが有害産業廃棄物として高温熱分解処理業者に依頼する。オートクレーブ内でシアンを分解して生成した沈殿物は、遠心脱水機で脱水ろ過しシアンの無い金属原材料として山元に資源化売却する。金属沈殿物を除去した廃液は、pH調整して真空脱水機で脱水ろ過する。脱水ろ過した無害無機汚泥は、東京都処分場へ搬入し埋立処分する。


二次公害防止対策

熱加水分解及び生物処理の全施設は、3階建の堅固な建物に収容し、処理作業における従業員就業時間は1日8時間である。生物処理施設は24時間稼動である。ブロワー等の騒音発生源となる機器類は、ボイラ室及び生物処理室内に収容してあり、外部への騒音対策に配慮している。施設内では、シアン廃液と酸の隔離に配慮し槽には防液堤を設置している。ボイラ燃料は、よりクリーンな都市ガス13Aを使用している。