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概要

昭和46年、東京都鍍金工業組合を母体として設立された東京鍍金公害防止協同組合は、東京都公害防衛計画の重点事業の一つとしてシアン公害撲滅のため、東京都経済局、公害局、下水道局、衛生局、清掃局および地元大田区の行政機関挙げての指導と助成を受け昭和47年6月1日東京都中小企業高度化事業として「城南処理センター」を完成、美濃部都知事出席により操業を開始し、爾来めっきシアン濃厚廃液の廉価で確実な処理に専念してきました。

その後21年間続いた従来の煮詰高温燃焼法を断念せざるをえなくなりシアンの完全無害化施設に転換更新するため東京都中小企業新技術開発助成金を仰ぎ、平成3年度にシアンの完全分解技術を開発、平成5年3月31日に新工場建物およびシアン熱加水分解施設を竣工、鈴木都知事出席のもと第1期工事の落成式を挙行、平成4年度にはシアン分解後の有機廃液の処理技術開発を東京都助成により実施、第2期工事として平成5年10月生物処理施設を追加、第3期工事として窒素削減設備を補完し、平成7年1月から一貫処理工場として順調に稼動を続けています。

この施設では、約2万ppmのシアン濃厚廃液中のシアンを完全分解し、同時に金属を除去した後、廃液を生物処理し、よりきれいな水として放流します。シアン濃厚廃液中に含まれる金属は回収し再資源として売却しています。

創業以来30年間にわたってシアン濃厚廃液77,500klを処理し、関係者から高い評価を受けています。

施設の運営は、排出事業者であるめっき業者自身の非営利組合が行っています。公共性の高い唯一の広域処理組合として、多くの皆様のご利用をお願いします。

シアン無害化施設建設事業投資概要

投資額(税別)    765,837,000円

平成4年度(第1期工事)  投資額 583,837,000円

1.建物 219,790,000円 2.熱加水分解設備 340,000,000円 3.付帯設備 24,047,000円

平成5年度(第2期工事)  投資額 136,000,000円(生物処理設備他)

平成6年度(第3期工事)  投資額  46,000,000円(窒素削減設備他)

資金調達(税込)    788,792,000円

東京都高度化資金借入 611,224,000円  自己資金 177,568,000円

組合加入金・賦課金

加入金 10,000円/1社  出資金 30,000円/1社 賦課金 200円/1社・1月

シアン等処理料金

シアン廃液 1㍑(東京都内・収集運搬費込み)  80円

シアン結晶物 1kg(自己持込)          90円

シアン試薬類 1g (自己持込)           8円

☆めっきシアン無害化処理方式

めっき工場から発生するシアン濃厚廃液等シアン含有物質の性状には液状物、スラリー、固形物がある。これらは発生者自己処理が原則であるが、産業廃棄物処理業者に委託しているのが現状である。その処理方式には以下の各種処理法がある。

①アルカリ塩素法:比較的低濃度廃液の処理方式、めっき工場の廃水処理で実施

②オゾン酸化法 ③電解酸化法 ④紺青法 ⑤不溶化法 ⑥煮詰高温燃焼法:以前の組合の処理方 

⑦噴霧燃焼法 ⑧熱加水分解法:現在の組合の処理方式 ⑨湿式酸化法 などがあり、地方では廃棄物処理業者の焼却炉による他の廃棄物との混合燃焼が多い。いずれも液状物を処理する方法であるが、混合燃焼では、処理不全による処理後の残留シアン、設備投資額、エネルギー消費による地球温暖化につながる排ガス発生による環境負荷の増大、二次公害として含有金属の蒸発拡散、ダイオキシン生成による地域への影響など問題が多いと考えられる。

☆めっきシアン濃厚廃液処理の経緯

産業廃棄物処理として、めっき工場からシアン濃厚廃液を収集運搬し処理を実施した事例は次のとおりである。いずれも時代に適応しなくなった等で、施設を操業を廃止したり、新しい方式に移行している。

①酸化燃焼法 昭和47年~60年 13年間  ②紺青法 昭和56年~60年 4年間

③煮詰高温燃焼法 昭和47年~平成5年 22年間

☆シアン熱加水分解法の原理

水銀やカドミウムのような有害物質は元素であり分解無害化は原理的に出来ない。しかしシアンは、化合物で無害な物質に分解することが出来る。

シアン化合物の分解処理技術として、いくつかの方法が公表されているが、実際に稼動している技術は蒸発乾固熱分解法と熱加水分解法だけで、酸分解法等の処理技術は操業を停止している。

熱加水分解法はシアン化合物を圧力容器中で加熱し、シアンをアンモニアと蟻酸塩とに加水分解する方法である。重金属のシアノ錯体は、アルカリを加えることによって加水分解することができるが、アルカリが存在しないと反応は不完全となる。

シアンが完全に分解されると、シアノ錯体を形成していた重金属は、その大部分が分解の容易な酸化物に変化する。この分解反応では蟻酸塩の一部がさらに酸化され炭酸塩になる。次亜塩素酸塩による酸化分解の困難な鉄シアノ錯体等も、アルカリの添加量が適切であれば、シアンを1ppm以下に分解することができる。

6Na4Fe(CN)6+12NaOH+66H2O+O2  加 熱  2Fe3O4+36HCOONa+36NH3

フェロシアン化ソーダ   か性ソーダ    水   酸素  加水分解  酸化鉄    蟻酸ソーダ    アンモニア

処理温度は、150℃以上であればよいので、11kg/c㎡程度の蒸気が得られるボイラーがあればよい。湿式で分解できるので濃厚シアン廃液の分解法としてはおもしろい。

(注:村田徳治著 1990.6.20 「廃棄物のやさしい化学」より)