機能めっき 化学的特性その他

化学的特性

抗菌めっきの効果(バイオチェッカー)を用いたハローテスト結果


耐薬品性

 化学薬品に対して耐食性を有する特性のことで、一般的に用いられる耐食、防食、防錆とは区別した。この特性が要求される製品は、化学工業で用いられる各種塔槽類(反応槽、攪拌槽、蒸溜塔など)や熱交換器、バルブ、フランジ、ポンプなどで、鉛めっきや錫― 鉛合金めっき、工業用(硬質)クロムめっき、無電解ニッケルめっきが利用されている。電極では、白金めっきも使われている。

 食品加工機械のように、有機酸に対する耐食性の必要なものには、錫めっきが広く利用されている。


汚染防止

 化学機器などの接液面にスケール等が付着するのを抑制する性質のことで、無電解ニッケルめっきにこの特性のあることが指摘され、その耐薬品性と相まって、広く利用されてきた。

 また装飾的用途では、細菌などの増殖を防ぐ性質、汚れにくさがクロムめっきに認められ、冷蔵庫ドアハンドル等に利用されている。


抗菌性

プラスチックなどの有機質表面に比較して、金属の表面では細菌の繁殖がきわめて遅くなることが知られている。 この特性を利用し、化学繊維上に銅めっきを施こして靴下の中に編み込むことで、 白せん菌を殺菌して水虫を予防するという、変わっためっきの利用法がある。


耐刷力

 鮮明な印刷を行なう上で欠かすことのできない特性である。印刷用のシリンダやローラーにはこの特性が必らず要求される。

 オフセットやグラビアなどの刷版用シリンダやローラーに工業用(硬質)クロムめっきを施こすと、鮮明な印刷が行なえるだけでなく、寿命の延長、インキによる腐食の防止、インクかきとり(除去)の容易さ、インクかきとりの際の摩耗の防止、また再生に際してはクロムめっきの剥離のみでよく、再彫刻せずに容易に再めっきできるなどの利点がある。グラビアローラー(銅版)は10万部の印刷で使用に耐えなくなるが、これに3〜10μmのクロムめっきを施こすとl00万部以上でも鮮明な印刷を行なうことができる。



その他の特性


難燃性

 プラスチックを金属被覆して、熱に対する弱さを補なうことで、各種プラスチックめっきで付与することのできる機能である。


海水腐食防止

 海水中あるいは塩分に対する防食性、耐食性のことで、船舶部品・海底通信機器(中継器)、建設・土木機械などに要求される特性である。防食用には一般にカドミウムめっきが利用されているが、海底中継器では高信頼性の錫― 鉛合金めっきや金めっき、白金めっきが利用される。

 工業用(硬質)クロムめっきでは30〜50μm、あるいは100μmの厚さのものが適用されるが、より腐食環境が厳しい場合は、素材をステンレスとしたり、下地にニッケルめっきをl0μm前後施こしたり、ダブルニッケルめっき、あるいは無電解ニッケルめっきを施こしたりしている。


浸炭防止

 鉄鋼部品の浸炭を防ぐ目的で利用されているのが銅めっきである。


写実・再現性

 原型を忠実に再現できる特性で、超厚付けめっき、いわゆる電鋳がきわめて信頼性の高い技術として広く利用されている。美術工芸品や仏具、レリーフ、工業用では導波管や金属ベローズ、電気カミソリの刃や網蓋、レコードスタンパーなどに、銅や銀、ニッケルの電鋳が活躍している。


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