機能めっき 電気的特性

電気的特性

金めっき(通信機部品)


電気伝導性

 電気伝導度が大であるほど電導性にすぐれている。表現を換えれば、電気抵抗値の小なるほど電導性にすぐれているということでもある。

 電導性がもっともすぐれている金属は銀(比抵抗0.016×10‐4Ω‐cm)である。ついで銅(銀の93%)、金(銀の70 %)、錫などとなる。従って、電導性を目的とする部品では、これらの金属のめっきが多く活用されている。とくにマイクロエレクトロニクスの陰の立役者であるプリント回路基板では、回路パターン作成や両面の回路導通のために、銅スルホールめっきが不可欠の役割を果たしている。

 接点やコネクタ、スイッチ、リードフレームなどの電子・半導体部品では、金や銀、錫、ニッケルなどのめっきが多用されているが、金や銀の場合、純度99%以上のめっきでは皮膜が柔かすぎるため、金ではニッケルや亜鉛などを数%含有させた合金めっきが、銀では有機物を添加した浴からの析出皮膜が、それぞれ用いられている。硬度はいずれも100Hv以上で、硬質金めっき、硬質銀めっきと呼ばれている。

 また近年、高価な金の代わりに、無電解ニッケル(Ni‐B合金)や光沢錫、光沢ハンダのめっきが利用される例もふえているし、摺動接点などでは耐摩耗性向上のため、 金めっき上に高硬度のロジウムがごく薄くめっきされている場合もある。


高周波特性

 波性とも称される。高周波電流(ミリ波、マイクロ波)の伝わりやすさのことで、伝送損失の少ない特性が要求される。すなわち、ミリ波、マイクロ波帯域での信号交流電流を流すために用いられる導波管(ウェーブガイド)に必要な特性のことで、電流の流れる導波管表面の凹凸が伝送損失を左右するため、表面の平滑性が重要となる。

 マイクロ波では、丹銅引抜管の導波管に、平滑性にすぐれた銅めっきが施こされ、その上にごく薄い銀や金がめっきされる。ミリ波では、精密電鋳(銅の超厚付けめっき)により製作した導波管に、平滑性の良好な銅めっきが行なわれ、さらにごく薄い金めっきが施こされる。


電磁波シールド特性

 パソコンやワープロ、あるいはファミリ−コンピュータなどの普及によって、近年、電磁波障害が急速にクローズアップされてきた。さまざまな電子機器や電子回路はそれ自体が電磁波ノイズの発生源であり、また逆に外部からのノイズの影響を受け、誤動作や障害をひきおこす危険にさらされてもいる。

 そのため、これら電磁波ノイズを機器単体で吸収または遮蔽すべく、いろいろなシールド対策が実用化されてきた。現在、もっとも確実な効果が得られると評価されているのが、無電解銅めっきと無電解ニッケルめっきによる複合めっき皮膜で、電磁波障害をほぼ 100%近く防止できるため、最新型コンピュータハウジングを中心に広く採用されている。


磁性

 磁気記録媒体に要求される重要な特性で、静特性(保磁力、角形比)と動特性(メモリ特性)を総称する。

 静特性にすぐれているのが硬質磁性材料で、そのめっき皮膜は、薄膜化、高記録密度化を実現できるといわれる。すでにニッケル−コバルト、ニッケル−コバルト−リン、コバルト−リンなどの合金めっきが開発、実用化されており、主に無電解めっき法により均一な薄膜(数百〜数千A)を作成することができる。

 逆に保磁力が小さく、透磁率の高いものが軟質磁性材料で、その薄膜(80 Ni-20Feの合金めっき)は薄膜ヘッド等に活用されている。

 さらに、めっき薄膜の機械的強度や耐食性を向上させるために、コバルト系の合金めっきにタングステンやモリブデンを共析させる合金めっきの研究も行なわれている。


低接触抵抗

 電気的接触部での電気抵抗の小さい特性のことで、他の硬度や耐摩耗性などが付加されてスイッチ特性と称することもある。すなわち、接点やコネクタ、スイッチなどでは、電気抵抗や接触抵抗が小さいことに加えて、耐食性(耐酸化、耐硫化)や、さらには高硬度、耐摩耗性、耐衝撃性などの機械的な特性が強く要求されるわけである。

 一般的には、金めっきの場合、コバルトやニッケルを0.1〜1%合金化して硬度と耐摩耗性を高めた硬質金(Hv 160〜250)が用いられている。(特殊な摺動接点には、Hv1,000のロジウムめっきも利用されているし、リードスイッチでは高硬度でスイッチ特性にすぐれたルテニウムめっきも実用化されるようになった。


抵抗特性/ヒューズ特性

 電気抵抗体には、巻線抵抗、炭素皮膜抵抗、酸化皮膜抵抗、蒸着金属膜抵抗などがあるが、それぞれに一長一短がある。ところが、ある特殊な無電解ニッケルめっき(Ni‐2%B-8〜16%P)をセラミック基体上にめっきすることにより、抵抗特性にすぐれ、量産性も良好な金属薄膜抵抗体を得ることができる。抵抗値はめっき膜厚により、2オーム、1オーム、0.5オームといった具合に設定できる。

 この抵抗素子は大きな過負荷がかかると数10秒間で溶断し、無限大の抵抗値となる特性、つまりヒューズ特性を有しており、ソリッドステート回路の保護回路部品として利用されている。


銀めっき(電子部品)


ハードディスクドライブ


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