機能めっき 光的特性

光的特性

黒色クロムめっきを施したオートバイ部品


反射防止性(防眩性)

 まぶしさを防ぐ特性のことで、防眩性とも称する。この特性が要求される製品の代表格は、カメラの内外装部品であろう。黒色クロムめっきや梨地ニッケル ―クロムめっき、黒色アルマイトなどが広く利用されている。自動車やオートバイでも、反射防止性プラス高級化のねらいから、黒色クロムめっきや亜鉛めっき(黒色クロメート)がよく利用されている。


光選択吸収性

 6,000℃という超高温の太陽光線の波長は、その99.9%が0.3〜2.5μmの領域にある。その領域の太陽光線を効率よく吸収し、しかも2.5μm以上の波長領域の太陽光(赤外線)の放射が極力少ない特性のことを、光選択吸収性と称している。

 吸収率はαで示され、1.0に近いほど大であり、また放射率はεで示され、小さいほど放射が少ないことを表わしている。ソーラーシステムに不可欠の選択吸収パネルには、こうした特性をもつ黒色クロムめっき(α=0.98、ε=0.066)が広く利用されている。他にも、黒色アルマイトや銅の黒染め(化成処理膜)、特殊黒色塗膜などが吸収パネルに活用されている。


光反射性

 光を効率よく反射する特性のこと。金または白色金属で、鏡面光沢に近いほど反射率は大となる。

 現在、一般的に用いられている鏡は平滑性のよいガラス面に、真空蒸着やスパッタリングでアルミニウムや銀をめっきして作られている。また、銅や鉛をめっきした銅鏡、鉛鏡も室内装飾用として用いられている。

 これに対して金属上の鏡面めっきも広く利用されており、アルミニウム上に光沢ニッケル―クロムめっきを施こしたアルミミラー(建築内外装材、バックミラー)や、鋼板上の光沢ニッケル−クロムめっき(各種反射板)、光沢ニッケル−金めっき(複写機の反射鏡)などがある。

 金属の超精密切削や研磨したものも表面鏡として実用に供されており、めっきとの組み合わせで良好な耐食性が付与された金属表面鏡は、光学的にも多くの利点をもっていると高く評価されている。


耐候性

 紫外線劣化をひき起こしやすいプラスチックスやゴム、塗装膜などを紫外線から保護する持性のこと。ほとんどのプラスチックスやゴム、塗装膜は、紫外線によって劣化し、脆くなったり色が褪せたり、クラックが入ったりして、商品価値が急激に低下する。

 プラスチックス上の各種めっき法は、こうした紫外線劣化を防ぐもっとも有効な方法であり、高級感付与という役割と共に、広範囲な分野で活用されている。


耐熱性

 高温下でも皮膜物性が低下しない性能のこと。概して電気めっきの耐熱性は、セラミックスのようなすぐれたものではない。本質的に、高温の酸化性雰囲気で電気めっきを利用することはむずかしいということであるが、温度条件や使用環境によっては、充分使用に耐える耐熱性めっき皮膜がないわけではない。

 スルファミン酸浴からのニッケルめっきは、500℃でも硬度の低下がみられず、切削加工性も良好である。

 無電解ニッケルめっき(Ni―P合金)は、400℃の熱処理で最高の硬度(Hv 800〜1,000)を示すが、300℃以上で継続使用されると硬度は急激に低下する。同じくNi‐B合金めっきは析出状態でHv800の硬度を示し、耐熱性もNi ‐Pめっきより遥かにすぐれている。また特殊な無電解ニッケルめっきとして、400〜700℃でも硬度低下のないものが一部実用化されている。

 工業用(硬質)クロムめっきは400 ℃以下の高温酸化雰囲気中で使用可能であるが、硬度はHv1,000→600と低下する。耐摩耗性、耐食性も次第に低下してくる。

 銀めっきは500℃の高温に耐え、焼き付き防止を目的とした高温環境下でのボルト、ナットに利用されている。

 また、とくに高温下での耐摩耗性が要求されるガラスの金型には、ニッケル −タングステン合金めっきが利用されている。航空機エンジン部品では、ニッケルめっき上にカドミウムめっきを施こして300℃で熱処理したニッケル −カドミウム拡散めっきが 利用されている。


熱吸収性

 熱を効率よく吸収する特性のことで、光吸収性と同様、黒色皮膜が活用されている。電機部品では、シールドケースに黒色クロムめっきを行ない、電気回路から発生する熱を吸収すると同時に、効率よく熱を発散させる機能を有したものもある。


熱伝導性

 熱を伝えやすい特性のことで、金属は全般的にこの性質を有している。もっとも熱伝導性にすぐれた金属は銀(伝導率1.01cal・cm‐1-sec‐1‐deg‐1)ついで銅(0.90)、 金(0.70)となる。

 熱伝導性を目的とする場合、一般的には銅が広く利用されており、一例として、熱伝導性の劣るステンレス製の鍋やフライパンなどに対して、その底部(加熱面)に銅の厚付けめっきが施こされており、有効面の温度分布を均一化させている。


熱反射性

 光反射性と同義で、2.5μm以上の波長域である赤外線を効率よく反射する性質をいう。鏡面光沢に近いほど、また白色金属光沢ほど、熱反射性にすぐれている。ストーブの反射板に、鋼板上の光沢ニッケル―クロムめっきが施こされているのが、代表的な例である。


梨地ニッケル−クロムめっき(カメラ部品)


銅厚付けめっき(フライパン)


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